10分で分かるインテグラル理論入門

  • 2017.10.20 Friday
  • 23:43

 

 

 

〇インテグラル理論とは何か?

 

 

 

インテグラル理論(Integral Theory)とは、アメリカの現代思想家ケン・ウィルバー(1949-)が創始した理論のことです。「インテグラル思想」「インテグラル・アプローチ」「インテグラル・フレームワーク」「統合哲学」などとも呼ばれます。

 

インテグラル(統合的)という単語は、包括的で、全てのものを含んでおり、何も周縁化せず、包容力があるということを意味している。

 

どのような分野へのインテグラルなアプローチも、厳密に以下のようであろうと試みる。すなわち、そのときの話題に関して首尾一貫した像を描ける範囲内で、出来るだけ多くの視点、スタイル、方法論を含もうとするのである。

 

ある意味で、インテグラルなアプローチとは『メタ・パラダイム』である。すなわち、既に存在する多数の別個のパラダイムを、アプローチ間の相互関連ネットワークへと結びつける方法なのであり、そこではそれらのアプローチはお互いを豊かにするのである。

――ケン・ウィルバー

 

インテグラル理論は、自然科学や社会科学、そして芸術や人文学など、人間に関わるあらゆる主要な知識領域からの重要な洞察を織り合わせたものです。

 

その包括的な性格のため、インテグラル理論は35を超える異なった学問分野・専門分野において使われています。例えば、芸術、ヘルスケア、組織経営、エコロジー、会衆派教会での牧師の活動、経済学、心理療法、法律、フェミニズムなどです。

 

さらに、インテグラル理論は、個人の変容・統合を目指すアプローチであるインテグラル・ライフ・プラクティス(ILP)を発展させるためにも活用されてきました。ILPの枠組みを用いることで、身体、感情的な知能、認知的な意識、対人関係、精神的な知恵など、自分自身の多様な側面を体系的に探究し、発達させることが可能になります。

 

インテグラル理論は、問題解決やアセスメントを目指す他のどのようなアプローチよりも、現実の多くの部分を体系的に包含し、しかも、より深くまで相互に関係づけるものです。そのため、21世紀に私たちが直面する複雑な課題に対して、より効果的に対処できる可能性を秘めているのです。

――ショーン・ハーゲンズ, An Overview of Integral Theory

 

 

 

 

〇具体的にはどういう理論なのか?

 

 

 

インテグラル理論は、具体的には「AQAL」〔アークアル("ah-qwul")と読む〕というフレームワークとして紹介されることが一般的です。

 

AQALとは、「All Quadrants, All Levels, All lines, All states, All types」(全象限、全レベル、全ライン、全ステート、全タイプ)の略であり、その実体は「象限」「レベル」「ライン」「ステート」「タイプ」という5つの要素からなるメタ・フレームワークです。

 

この5つの要素と、いくつかの鍵となる考え方(以下で説明します)を知っておけば、ある日突然周りの人たちがインテグラル思想について話し始めても、置いていかれずに済むでしょう!

 

 

 

 

〇1. 象限

 

 

 

普段、私たちは実に様々な視点から物事を捉えていますが、インテグラル理論では、その最も根本的な類型として次の4種類の視点があると考えます。

 

1. 個人の内面(思考、感情、感覚など)

2. 個人の外面(行動、身体、脳/神経など)

3. 集団の内面(文化、相互理解、場の"空気"など)

4. 集団の外面(システム、制度、物理的環境など)

 

この4つの視点ないし領域のことを、インテグラル理論では単に「四象限」と呼びます。

 

 

 

例えば、ある教師が研修のために公開授業を行うとしましょう。あなたはその教師を指導する立場にあります。どのような点に着目しながら、授業を観るでしょうか?

 

 

あなたは、教師の発声や身振り手振りに着目するかもしれません(個人の外面)。あるいは、各生徒の目線や手の動き、座り方や発言回数に着目するかもしれません(同じく個人の外面)。

 

部屋の光量や空調、机の配置の仕方に着目するかもしれません(集団の外面)。教材の提示方法(紙、プロジェクタ、動画など)、あるいは、生徒-教師間ないし生徒-生徒間のコミュニケーションの頻度に着目するかもしれません(集団の外面)。

 

あるいは、各生徒がどのように感じ何を考えているのかに着目するかもしれませんし(個人の内面)、教師が伝えるべき知識や価値に対して誠実であるかどうかに着目するかもしれません(個人の内面)。

 

あるいは、教師-生徒間に信頼関係ができているか、伝えるべき知識や価値が共有されているか、生徒-生徒間のコミュニケーションが意味あるものになっているかに着目するかもしれません(どれも集団の内面)。

 

このように、様々な視点があると知ることで、自分の活動を今までよりも包括的でバランスのとれたものへと拡張していくことができますし、また、これまで相容れないと思っていた他者との相互理解を深めることにもつながります。

 

 

またこの4つの領域は、あなたが今ここで、常にすでに関わっている領域でもあります。

 

あなたは今、何を感じ考えているでしょうか?(個人の内面) どんな姿勢で、どんな体調ですか?(個人の外面) どんな媒体によってこの文章を読んでいますか?(集団の外面) この文章を通して、あなたと私はどんな意味を共有できたでしょうか?(集団の内面

 

 

 

(2へ続く)