ポスト・アベノミクスの3本の矢を考える 第一の矢

  • 2017.04.21 Friday
  • 20:00

 

 

経済問題をめぐって。

 

自分の考えが大枠としては定まってきたと思われるので、細かな部分はまだ詰められていないものの、全体の構想を一旦述べておきたい。

 

現行の経済政策を批判をしても有力な「対案」を出せないという諸野党の態度には辟易しているので、対案として、アベノミクス風にまとめてみることにする。

 

 

 

以下が、ポスト・アベノミクス、あるいは「アベノミクス第3ステージ」の試案である。

 

<ポスト・アベノミクス(あるいは、アベノミクス第3ステージ)の3本の矢>

第一の矢:インフレターゲット付き個人給付型金融緩和

第二の矢:デマンドプル型且つ人材育成重視型の労働移動

第三の矢:税収・通貨発行益ミックス型ベーシックインカム
 

 


第一の矢:インフレターゲット付き個人給付型金融緩和

(希望と安心を生み出す直接的なデフレ不況脱却政策)

 

日銀は現在、毎年80兆円のお金を発行し、国債の買い入れを通して銀行や保険会社などの国債保有者にお金を供給することで、景気回復("物価の安定")を目指している。

 

けれども、デフレ不況の主因が国民の購買力低下("モノが売れない")にあるのなら、そんな回りくどいことをせずとも、直接、国民一人一人にお金を供給してしまえばよいという理屈である。

 

主な根拠は、技術進歩による供給力の増大によって、多くの業界で、モノに対する慢性的な供給過剰・需要不足が生じるようになったため、「モノ不足」の時代とは根本的に発想を転換させる必要があるという点にある。(実際には業界によって需給の状況が大きく異なるために、それほど単純ではない(後述))


具体的には、例えば80兆円のうち15兆円のお金の行き先を変えるだけでも、単純計算で国民全員に月額1万円のお金を無条件で供給することができる。月額3万円としても、必要額は年45兆円である。

 

全額貯金してもよい。全体として何割かが消費に回ればよい。一回限りの供給では貯蓄に回りやすいかもしれないが、継続的に供給し続けることで、消費に回る割合が増えていくことが期待される。

 

個人にお金を供給するので、これを「量的・質的金融緩和」になぞらえて「個人給付型金融緩和」と呼ぶことにしよう。

 

 


その際、お金の経路としては、日銀がまず政府にお金を供給し、今度は政府がそのお金を国民全員に供給するという流れになると思われる。

 

しかし、ここに少々問題がある。

 

現在、日銀が政府に直接(=各種投資家が国債を売買し合っている国債市場を介さずに)お金を供給することは、財政法第5条で「原則として禁止」になっているからだ。

 

財政法第五条〔政府側から見た視点〕
「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りではない」

 

なぜ禁止されているのか。

 

戦前及び戦中において、軍事費調達のために際限なく国債が発行され、急激なインフレを引き起こしたという経験への反省から、禁止されているとされる。

 

けれども、逆に言えば、もし「際限なく国債が発行されるリスク」を排除できるのなら、適切な政策的根拠のもとで、政府が日銀から直接(国債の引き受けによって)お金を受け取っても問題はないと言える。


(そのリスクを排除できたとしても、他の主要な反対論として、「国の借金が増加して将来負担が増加する」及び「国債や円の信用が損なわれて暴落する」及び「支給額をゼロに下げてもインフレが制御不能になる」というものがある。反論は長くなるので詳細は割愛するが、共通するのは、どれも印象論であり、本質はカネではなくモノ(とサービス)であることを忘却しているということである。しかし簡単に言えば、1つ目の批判は通貨発行権の存在を完全に見落としており、2つ目は日本が強大な対外輸出力を有している限りは問題ではないし、3つ目は強大な生産力を有する国において実物経済に制御不能性が生じる理由が不明である)

 

 


具体的には、ちょうど現在の日銀が行っているように、インフレターゲット(インフレ目標)を設定してやればよい。

 

「物価(及び賃金)の上昇率が一定の割合(例えば3%)を超えるまで、国民一人一人にお金(例えば毎月1〜4万円)を供給する」という具合である。

 

物価や賃金や経済全体の状況を見ながら、供給するお金の量を機動的に変化させていく。お金の供給先を国債保有者から国民全員へと変えるだけであり、物価の安定という日銀の目標は変えなくてもよい。

 

また、インフレターゲットを厳然と設定しておくことが政治的には肝要であるから、名称を「インフレターゲット付き個人給付型金融緩和」としておく。

 

(他にも、経済的というより政治的な反対論として「今回の国債引き受けには制限があるしても、今後、様々な勢力が様々な利権のために(制限つきであっても)国債引き受けを行うようになり、全体として見れば過剰な国債引き受けが行なわれてしまうリスクがある」といった意見もありえよう。そのリスクを完全に否定しきることは困難であるが、総合的に考えれば――特に、後述する第二の矢との相乗効果を考えればいっそう――リスクやコストよりもメリットの方に大きく軍配が上がると私は考えている)

 

 

 

法的な枠組みとしては、財政法第5条を補足・修正する特別法を制定するのが妥当なところかもしれない。財政法を補足・修正するという意味では、いわゆる「特例国債法」のような位置づけである。

 

その際、法律制定の根拠として、少なくとも

 

「戦前・戦中の例とは異なり、お金と国債の際限なき発行を防止する手段(インフレターゲット)が法律に組みこまれていること」

 

「現代では、技術進歩による供給力の増大のために、業界によって慢性的な需要不足・供給過剰が生じるようになった。過去20年余りの国民生活に対する負の影響は甚大であり、時代に即した新しい経済政策が必要であること」

 

の2点を挙げておくことは必須だろう。

 

(なお、何度か示唆したように、需給の現状や見通しは業界や業種によって全く異なるので、日本経済の持続的な回復・成長という点に限って考えても、一本目の矢だけでは不十分であると思われる。労働移動と産業転換に関する二本目の矢が必要な所以である)

 

 

 

こうして、第一の矢「インフレターゲット付き個人給付型金融緩和」により、デフレ不況を正当に脱却する。


[第二の矢へ続く]

 

 

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