ポスト・アベノミクスの3本の矢を考える 第三の矢(最終)

  • 2017.05.23 Tuesday
  • 18:10

 

 

第二の矢の続き。

 

話は少し戻るが、これまで、第一の矢、さらには第二の矢においても、お金を国民全員に供給することによって需要を増やすことが必要だと述べた。

 

だが、いったいどれほどのお金を供給すれば、「緩やかな好況」を持続させることができるのだろうか。ある程度の期間だけ供給したら終わりなのだろうか、それとも、ずっと供給し続けることが必要なのだろうか。

 

無数の変動要因があるために、具体的な額は実際に行ってみなければ分からない。しかし私の直観では、緩やかな好況を保つためには、月1〜3万円程度のお金をずっと供給し続けることが必要である。

 

業界別に見れば実に様々であるが、日本経済全体としての需要の不足を解消するためには、当面は、継続的な貨幣の供給が必要になると思われる。

 

 


これは、困ったことなのだろうか?

需要が足りなくなり、一般市民にまでお金を供給しないといけなくなることは、困ったことなのだろうか?

 

とんでもない。

本当にとんでもない。

経済評論家の近視眼的な分析や、資産家の自己防衛的な戯言に丸め込まれてはいけない。

 

これは「少額のベーシックインカムは、今すぐ実行可能である」ということを示しているからだ。

 

 

 

 


第三の矢:税収・通貨発行益ミックス型ベーシックインカム
(21世紀型の経済システムを実現する抜本的な制度改革)

 

第三の矢は、第一及び第二の矢とは異なり、今すぐに放つことのできる矢ではない。これは、すぐに実行可能な政策というよりは、目指すべき未来の展望である。

 

したがって、具体的にどのような方法と順序で行うのがよいのかは、第一第二の矢の影響や、世論や経済全体の状況を見ながら、機動的に判断していくことが望ましいと思われる。

 

特に、第一の矢を放つことで、デフレ不況を適切に脱却するとともに、国民全員への実質的な「少額ベーシックインカム」を実現することができれば、人々の行動や価値観に大きな変化が生じることが予測される。

 

そのため、ここでは、具体的にどのような政策をどのような順序で行っていくのが最適かということは述べず、改革が必要だと思われる項目を列挙することにしたい。

 

 

 


とはいえ、最も大きな全体像については、順序と目標を示しておく。

 

1. 第一の矢で述べたように、日銀の国債引き受けによって、国民全員に少額のお金(例えば月1〜3万円)を継続的に供給する。こうした政策は、俗に「ヘリコプターマネー」とも呼ばれる。

 

2. 第二の矢で述べたように、適切な人材育成と労働移動を促進することによって、持続可能な未来の構築に必要な産業転換を実現し、各分野におけるモノとサービスの供給力を適切に増加させる。すると、国民全体にさらに多くのお金を供給しても、過剰なインフレが起きないようになる。

 

3. こうして、国民全員に多くのお金を継続的に供給することができるようになる。いわゆる「ベーシックインカム」が実現される。


 

 


他に改革が必要だと思われる項目、及び、重要な注意点を以下に挙げておきたい。

 

・日銀が政府の国債を引き受けるとは、実質的には、日銀が通貨を発行し、政府が「通貨発行益」を財源とすることに等しい。したがって、第一の矢は国債引き受けではなく、政府通貨発行によって実行しても構わない。理論的にはその方が明快である。

 

・貨幣供給の財源を通貨発行益だけにし続けると、中期的にはインフレ率が高くなりすぎるので、資本所得への課税強化高額金融資産への課税による税収を財源として併用する。

 

・富裕層を目の敵にしようというわけではない。社会に収入相応の価値を提供してきたお金持ちには、もう少し負担してもらう一方で、直接ないし間接に「金で金を吸い上げている」人々に対しては、妥協せず厳しく接しようというのが基本方針である。

 

・並行して、民間銀行の信用創造を段階的に縮小していく必要がある。預金準備率を徐々に引き上げ、100%ないし、十分に大きな値にすることで、バブルの膨張と崩壊を予防する。

 

・並行して、国際間の資本移動の問題に対処していく必要がある。

 

・並行して、土地・不動産の問題にも対処していく必要がある。

 

・並行して、GDPの算出方法も適切に改定していく必要がある。

 

・適度な通貨発行益と金融分野への課税によっても足りない財源は、消費税ではなく、法人税の累進課税化(大企業への法人税の強化)によって実現する。

 

・哲学的には、法人税の主要財源化を正当化する根拠は、巨大企業の経済活動には膨大なテクノロジーが必要であり、そうしたテクノロジーとは過去の偉人たちが生み出した人類共通の遺産であるという点に求めることができよう。

 

・例えば、マクスウェルが成し遂げた業績の遺産は、誰が受け取るべきだろうか? 偉大な科学者たちが思いを馳せた未来の受益者とは、一部企業の役員や株主ではなく、あらゆる人々であろう。

 

・消費税は撤廃すればよいと思われるが、経済を冷やす(お金の循環を減らす)ことが必要なとき、法人税の強化と併用して利用することは考えられる。

 

・産業転換によって、テクノロジーの発達や人口・産業構造の変化に対応するだけでなく、環境・資源問題への取り組みを強化することも必要である。

 

・第一の矢により、実質的な少額ベーシックインカムを実現することによって、「1. 労働者へのエンパワーメントによる労働条件の改善」「2. 文化的・芸術的な活動の増大」「3. 公共圏と親密圏の民主的な再編成」といった変化も促進されると思われる。

 

制度の変化と世論の変化の好循環をつくることで、人々の文化・意識・行動面での変化を、段階的に少しずつ、適切な速度で進めていく。たとえ「よいこと」だとしても、あまりにも急速な変革はバックラッシュを引き起こすからである。

 

・ベーシックインカム社会で本当に注意すべき問題は、「小人閑居して不善をなす」(つまらない人間が暇でいると〔独りでいると〕ろくなことをしない)ということだと思われる。 

 

中額以上のベーシックインカムが社会的に持続可能となるためには、人々の経済的及び民主的な知性が向上していることが必要であり、そのためにはまず、少額のベーシックインカム(BI)をかなり長い期間にわたって続ける必要があると思われる。

 

・私の直感では、少額BI(月1〜3万円程度)は今すぐ始められ、始めるべきであるが、中額BI(今の相場で月6〜8万円程度)に到達するまでには、10〜20年ほどの時間をかけるのが妥当であると思われる。

 

・高額BI(今の相場で月12〜14万円程度:それだけで十分に暮らせる金額)が社会的に持続可能となることはさらに難しく、中額BI開始から30年は必要かもしれない。もっとも、何十年も先の未来を予測することは難しく、中額BIを当面の目標として定めるのが妥当ではないかと思う。

 

・「どのように人材育成をするのか」及び「どのように人々の経済的及び民主的な知性を向上させるのか」という問題は簡単ではないが、必ず取り組まなければならない問題であり、「成人の発達理論」及び「スピリチュアル・インテリジェンス」に関する知見は必須であると思われる(本ブログのメインテーマの1つ)。

 

・中長期的には、給料の額と社会的貢献の度合いが大きく乖離しない社会を目指していくことが望ましいと思われる。 

 

 

 

 

以上、これまで述べてきた「ポスト・アベノミクスの三本の矢」の骨子をひとことでまとめるならば、次のようになるだろう。

 

適切な貨幣循環・人材育成・産業転換を通した

持続可能な中額ベーシックインカム社会の段階的実現

 

これこそ、今この国が(あるいは同等の条件にある他の国が)実行すべき選択肢であると私が考えるものである。テクノロジーだけが発達を続けても、経済システムの抜本的な改善なくしては、私たちが「かつて夢見た世界」を実現することはできないだろう。

 

(なお、基本的な発想の多くは、のらねこま氏の著作『ベーシックインカムの時代が始まる』及び『金融緩和の天国と地獄』と通ずるものであり、合わせて参照されたい)

 

 

 

 

最後に、1つ1つの単語にこめた意味を、改めて書いておくことにする。


適切な貨幣循環

.ぅ鵐侫譽拭璽殴奪班佞個人給付型金融緩和(通貨発行権の適切な行使)
土地・不動産の問題
9餾歸な資本移動の問題


適切な人材育成

\人の発達理論(認知的・対人的・実務的な能力の育成)
▲好團螢船絅▲襦Εぅ鵐謄螢献Д鵐后平爾ぜ己理解、高度な共感力、美と崇高への感性、宇宙的視野)

 

適切な産業転換

/雄牋蘋とセットされたデマンドプル型労働移動による産業転換
⊃邑構造の変化、テクノロジーの発達、途上国の経済成長等に応じた産業転換

 

持続可能な

/用創造の段階的縮小によるバブル膨張崩壊サイクルの防止
通貨発行益だけでなく資本所得課税・金融資産課税・法人税を併用し、過剰インフレを予防
4超・資源問題への取り組み

 

中額ベーシッムインカム社会

]働者へのエンパワーメントによる労働条件の改善(雇用と所得の部分的な分離)
∧顕重・芸術的な活動の増大
8共圏と親密圏の民主的な再編成

 

段階的実現

\度の変革と世論の変化の好循環をつくる
⊃諭垢侶从囘及び民主的な知性を向上させる必要性

 

その他

GDPの算出方法の改定
給料と社会的貢献度が乖離しない社会へ